第318章

 そう考えるだけで、山下那美の腹の虫が治まらなかった。

 怒りで発狂しそうだ。諦めるなんて論外だ。

 沸き上がる激情を無理やり押し殺し、那美はククの目前に躍り出て、あの子を奪い去ってやりたい衝動に駆られた。前田南に再び、喪失の絶望を味わわせてやるのだ。

 だがその時、大きな手が突如として那美の手首を掴んだ。間髪入れず、もう片方の手が彼女の口を塞ぎ、強引に車の中へと引きずり込む。

 那美は驚愕に目を見開いた。拘束が解かれると、反射的に悲鳴を上げようとする。

「雪見、叫ぶな。俺だ」

 聞き覚えのある男の声。運転席に座る高遠令治を確認するなり、那美の怒りは頂点に達した。

「高遠令治!...

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